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月明かり










26
 インタフォンを押してはその沈黙に閉口し、恵の携帯電話を鳴らす。
 そして 留守番電話に舌打ちして、又 インタフォンを鳴らす。
 そんな繰り返しを何度も続けた私だった。
 やがて その奇怪な行動に、住民 管理人が好奇の目を寄せてきた。
 その目が又、私を追い詰める。


 マンションを一旦離れた私は、近くの公園にたどり着いた。
 冷たい風が通り抜け、後方を振り返るとマンションが私を見下ろすように建っている。
 私の耳に自分の歯軋りが聞えてくる。
 再び携帯電話を開いた。


 (・・・・・・・・・・・)


 「塩田か」
 『おお・・・山本、 どうした?』

 
 「京子・・、京子さんに連絡をとってくれ」
 『おいおい どうしたんや いきなり』


 「うん・・・恵が・・・、恵が居なくなった・・・・・出て行ったんだ家を」
 『ええ! 何やて・・』
 向こうで塩田が慌てふためく様子が目に浮かぶ。

 
 『ちょっ ちょっと待てよ・・・どういう事や 出て行ったって言うのは』
 「・・・朝 起きたら居なかったんだ・・・・書置きを残して」


 『・・・何てこっちゃ』
 「・・・・・・・・・・・・」
 短い沈黙が少しだけ私を落ち着かせてくれる。
 私の声は冷静さを取り戻していた。


 「たぶん恵は波多野の所に居る」
 『・・・・・・・・・・・・』


 「でも 波多野のマンションに行ったが誰も出ないんだ・・」
 『・・・・・・・そうか・・』


 「・・・だから 京子さんに波多野の居場所の心当りがないかを聞いてくれないか」
 『・・ああ ・・・・わかった 聞いてみるわ』


 「頼む」
 『よっしゃ!』
 塩田の最後の言葉が、私に気合を入れてくれる。
 

 公園の汚いベンチに一旦腰を降ろした私は、じっと地面を見つめた。
 恵は食事の用意をして出て行った。
 食事を作る余裕が気持ちの中にあったのか?
 まさか夕べの狂乱めいた痴態は?
 何かが恵を奮い立たせたのか?


 なぜ・・・なぜ・・なぜ・・。
 銀杏の葉が吹き飛ばされる中を “なぜ?” の2文字が舞い続けていた。


 それからどの位の時間、そこの汚いベンチに座っていたのか。
 クシャミと同時に身震いを覚えながら立ち上がると、もう一度マンションへ向ってみた。


 波多野・・・・。
 集合ポストには郵便物は見受けられない。
 波多野はやはり、この部屋に出入りしているに違いない。
 私は管理人室を訪ねてみる事にした。

 
 「・・・すいません」
 その声に年老いた男が、警戒するように私を覗き見る。


 「あんた さっきもそこでウロチョロしてたよな」
 「いっ いえ・・すいません。・・実は、903号室の波多野・・・さんを 訪ねて来たのですが・・・」
 男が読みかけの新聞を置く。

 
 「あんた 波多野さんの知り合いかい?」
 「ええ そうなんです。電話が繋がらないので来てみたのですが・・」
 考えてもいなかった言葉が、自然と口を付く。
 男が眼鏡の縁を上げ、もう一度私の顔を覗き込む。


 「あまり住民のプライベートの事は言えないが、あんたはどういう知り合いなんだい」
 「・・・・ええ 実は波多野に、貸した物を返してもらいに来たのですが・・・」


 男が窓越しに首を小さく振り、辺りを気にしながら喋り始めた。
 「あんたも “あれ”か?」
 「?・・・」


 「あんたも金貸しかい?」
 (!・・・)


 私の顔の何処が金貸しに見えたのか。
 初めて言われたその言葉に、目の前の男を黙って見つめていた。










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