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月明かり










35
 どんよりと曇った冬空に、無機質なマンション郡が美しく見えた。
 その下で私は一台のタクシーを拾った。
 運転手に “六本木”と伝えて目を瞑(つむ)る。


 恵・・・・。
 可愛らしい愛妻の顔が滲み、京子の顔が浮かび上がる。
 そして それが又 恵の顔に変わり、又 京子の顔へ・・。


 『私から大事な男を奪った〜』・・・・。
 『借金のかたにでも差し出されたのか〜』・・・・。
 頭の中で、哀れみ と悲しみが交差する。


 『波多野君 アナタは知ってるんでしょ、その女の本性を〜』・・・・。
 『妻の過去を許せる度量の持主なのか〜』・・・。
 (・・・・・・・・)


 恵と初めて結ばれ、それから結婚するまでの一年。
 2日間メールの返信も無く、電話も繋がらない事があった。
 最初は心配した。
 事故にでもあったのではないか?
 次に良からぬ妄想が湧いてきた。
 まさか 私の前から去ったのでは?
 2日目 心配と妄想が混在した。
 3日目の朝 連絡が来た。
 『携帯電話を紛失してました。でも 見つかりましたから』・・・明るい言葉に安堵を感じると同時に、心配性の自分が嫌になった。
 

 ある時 待ち合わせの場所に30分近く早く着いた事があった。
 知らない男と楽しそうに話す恵を見た。
 私はしばらくその様子を眺め、男がその場を立ち去るのを見て恵に近づいた。
 『え〜 今のは道を聞かれてただけですよ、ナンパされてると思ったんですか?』・・・笑いながら話す恵、私は見知らぬ男に嫉妬する自分が嫌だった。


 披露宴に代わる小さなパーティーを開く前日。
 もし恵が来なかったら・・・そんな場面を思い浮かべてしまう自分が嫌だった。
 でも今は・・・・。
 怒りを向けなければ・・・・京子に・・・波多野に・・・。
 恵は、私の妻だ。
 

 「この辺りでいいですか?」
 いきなり運転手の声がした。


 タクシーを降りた私は、あのビルへ向かう。
 己の足取りを確認しながら、アドレナリンを上げる。
 自分を奮い立たせようと、視線に睨(にら)みを利かせる。
 奥歯を噛み締めた私の目に、あのビル、そこから地下に続く階段が見えてきた。

 
 横目で5枚の絵を確認して、階段を降りていく。
 電源を切ってあるのか、あの時のようにその絵が壁から浮かび上がる事は無い。
 

 ガチャっという音を耳にして扉を開ける。
 京子の言ったとおり、カギは開いたままだ。
 この暗闇の先に間違いなく人は居る、京子が言った“あの人” それに波多野、そして恵・・・。


 私の身体を、冷んやりとした空気が包み込む。
 足を進めた空間は、あの時と違っていた。
 客の居ないテーブル、当然 黒服もバニーガールもいない。
 微かに光る足元の補助ライト、それと 薄い緑の非常灯。
 しばらくすると目が暗闇に慣れてきた。
 前方に黒い壁・・いや、淫靡な世界と客席を隔(へだ)てる黒い緞帳(どんちょう)が見えた。
 
 私はソコに惹き付けられる様に近づいた。
 身体の中にさざ波が立つ。
 舞台に近づく私の五感が、異様に研ぎ澄まされていく。
 

 風のない空間で、緞帳が微かに揺れている。
 私は緞帳の裾に手をやった。
 わずかに上がった床との隙間から、淡い光が洩れた。
 その時だった。


 ガチャリ・・・私の左手首に冷たい感触があった。
 あっ ・・・ そんな言葉を発する間もなく、ガラガラという音と共に左手が天井へと引き上げられていった。
 そして目の前で、緞帳がゆっくり昇り始めた。
 

 伸びきった左肩から上を見上げてみる。
 左手首に手錠が繋がれ、そこからロープが天井の滑車へと伸びている。
 つま先で床を噛むように立つ私の前で、緞帳が昇りきった。

 
 私の目が暗闇に立つ人影を捉える。
 2人の男・・・そして その横に一人の・・・。


 「お待ちしていました。京子さんから色々と伺っています」
 そう言って一人の男がペコリと丁寧に頭を下げる。
 波多野・・・・。


 「波多野君、じゃあ お客さんも来た事だし、続きを始めようか」
 渋みのあるしゃがれた声、それでいて落ち着き払った声。
 いつかのこの舞台で、人妻を調教していた作務衣(さむい)を着た男。
 京子が言った “あの人”・・・挿絵の描き手でありながら“縄師”でもある男。
 

 舞台に立つ男の横には、腰高ほどの高さのテーブル。
 その広いテーブルの上には2本の赤い蝋燭(ろうそく)、縄、そして浅黒いムチが2本、更に歪(いびつ)な形をした何本ものバイブレーター。


 コレは幻覚か?
 いや、違う。
 身動きしようとする度に、左手首に痛みが走る。
 

 いつか見た夢と同じような場面・・・・。
 そのシーンを再現するかのように、男達の横のソファーには一糸も纏(まと)わない女の白い肌があった。










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