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月明かり










40
 マンションに戻った私。
 ベットに横になる。
 2人いれば楽しい空間は、一人では寂しすぎて息もつけない部屋だった。
 長い長い一日が終わろうとしていた。
 私はゆっくり目を閉じた。


 妻は月明かりに照らされて・・・・・
 昔 そんな書き出しで始まる小説を読んだ気がする。


 《白い月明かりの その裏側で・・・涙の欠片(かけら)を洗い流した・・・・》
 《白い月明かりの その裏側で・・・僕は歪(ゆが)んだ顔を洗った・・・》
 そんな詩の朗読のような場面のある小説だった・・・・・ような気がする。


 不意に目から涙が零(こぼ)れ落ちた。
 泣いた・・・。
 長い孤独と過ごした時でも、泣く事なんてなかった。
 なのに・・・・。
 泣いた・・・。
 押し殺しながら・・・泣いた。




 次の朝。
 会社に休暇願いの電話を入れる。
 駅に歩きながら、携帯電話を開く。
 塩田から数件の履歴、そして留守番電話の表示。
 それを一つずつ聞きながら歩く。


 どうやら塩田も、京子と色々話をしたようだ。
 私からも奴には、話をしないといけないだろう・・・・・全てが終わったら。
 全てが終わったら・・・・・。
 ・・・・・終わり?  それは一体何を意味するのだ。
 (・・・・・・・・・)


 私は病院に向っていた。


 病院に着いた私は、昨夜の医者と面談。
 医者は私の事を、直ぐには昨夜の男と同じ人物だとは分からなかったようだ。
 夕べは余程ひどい顔をしていたのだろう。
 医者の驚いた顔が印象深かった。


 「病室は3階の 303号室です」
 その言葉を聞いた私は、廊下に出る。


 『興奮剤や媚薬は少量だったので、人体に影響が残ったり、副作用的な事は心配ないと思います』
 医者の言った言葉が頭をよぎる。
 『でも これからは使用は控えてください』
 私が使用したと思っている・・・私も説明をしなかったのだが。


 『それと奥様は、心的傷害を受けてると思います。できれば私どもスタッフが奥様を一度しっかりヒアリングをしてから会われたほうが良いと思いますが・・・』
 『・・・・いいえ』
 そう返した私がいた。


 『では、奥様と話をされて様子がおかしいと思われたら、声を掛けてください。当病院には心療内科もありますので・・・ご夫婦で』
 まるで保険の商品でも勧めるかのような口調だった。
 そんな事を考えながら歩く私の目に、廊下の突き当たりの人影が映った。


 派手な冬物のコートを手に持ったその女が、私の姿を確認して頭を下げた。
 そう言えば、今朝は今年1番の冷え込みだったらしい。
 緊張した顔つきの京子の横に、強張った顔の波多野、そしてその直ぐ後に織田・・・。
 私の一睨みに、波多野がその痛々しそうな顔をいっそう苦しそうにして頭を下げた。


 「山本さん、・・・色々ご迷惑をかけました」
 改まって京子が頭を下げた。
 コートの他に紙袋と小さな包みを持っている。


 「佳恵さんにも “お詫び”をと思ったんだけど、面会はダメだと言われて・・・・」
 私は目の前の3人の顔を順番に見回した。


 「お詫び? ・・・・・そんなものはいい。 ・・・・・恵があなた方と会う事はもう一生無い。 ・・・・そして 私があなた方3人と会うのもこれが最後だ」
 その言葉にこの場を沈黙が支配する。


 しばらくして京子が、小さな咳払いをする。
 それを受けて波多野が半歩前に出ようとした。


 「・・・・・・・・」
 「止まれ! ・・・波多野、お前から聞く事は何も無い、話す事も・・・・」
 私の強い口調だった。
 そうなのだ・・・・・・昨日のマンションでの京子の話し、そして夕べの織田の話し、そんなものはウソか本当か分からない。
 ここで波多野から謝罪や何かを聞いたとしても・・・・。


 恵・・・・。
 そうなのだ・・・・。
 恵から・・・・・恵から全てを聞かなくては・・・この数日間の事・・・・そして。
 『私は病んでいた』
 その真実を。


 不意に私の涙腺が緩んだ。


 「もういいから帰ってくれないか」
 こんな所で感情を爆発させたくなかった。


 京子が軽く頷き、持っていた包みを差し出そうとする。
 「慰謝料か・・・そんな物はいらない」
 「・・・・・・・でも・・・・・せめて治療費に・・・」


 「いや、そこの色男の治療費に当ててくれ」
 そして又 僅(わず)かな沈黙が来る。


 京子が自分に言い聞かせるように2、3度頷いた。
 「色々ご迷惑をお掛けしたわ・・・・・でも」
 「・・・・・・・・・・」


 「でも これだけは覚えていて頂戴・・・・・。私は道尾を愛していた・・でも離婚した・・でも愛していた・・今でも」
 京子と初めて会った時感じた事・・・・相当の器量の持主・・・最後までそうだった。










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