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欲望の劇場










7
この日のステージは全て終了し、中村と山田はビルの4階の事務所に呼ばれていた。


2人の目の前には50代半ばくらいの男が座っている。
「山田さん、どうもご無沙汰です。 今日のショーはどうでしたか」


「いやあ神崎さん、相変わらず凄いですね。興奮しっぱなしですよ」


「はは そうですか、それはありがとうございました。それと、こちらは中村さんでしたね。どうでしたか、楽しんでいただけましたか」


「はっ はい、私もとても興奮させていただきました。あまりこういうショーを見たことがなかったもので」
中村は緊張しながら答えた。


「ふふ そうでしょう、ここは一見(いちげん)の人達はなかなか入れないクラブですからね。 でも中村さんは又いらして下さい。事務所に来てもらったのも中村さんはそれなりの企業にお勤めだし接待でも使ってもらえればと思ったからなんですよ」


「ありがとうございます、私もそれなりの権限で接待費を使えるようになったので、今度うちの得意先を連れて来たいと思います」


「ふふ それはありがたい・・・ただし連れて来るのは口の堅い人達だけですよ。・・・そうだ それならもう一度今度はうちが中村さんを招待しましょうか、毎回違う内容のショーをやってますから」


「えっ よろしいのですか それはうれしいな。 ちなみにショーはどれ位の割合で開催しているのですか」


「そうですね 月に2、3回です。 出演する女性は家庭を持ってる奥様ばかりですから、頻繁(ひんぱん)に行うわけにはいきません」


中村は山田、神崎と出されたビールを飲みながら色んな話で盛り上がっていった。
「神崎さん、しかしあの女性達は本当に普通の奥様なのですか。何だか信じられませんよね、どうやって見つけてきたのですか?」


「ふふ 中村さん気になりますか。あの女性達はストリップ劇場などに上がるプロの踊り子達とは全く違う素人の方達なのですよ。ですから私達はAV女優や風俗嬢を募集するような応募の方法はとってはいません。我々の意図を理解している外部スタッフのような者があちこちにいるんです。例えば一般企業の社員の中にもいるし、系列の金融会社の中にもいます。他にはスナックのママもいるし、珍しいところではPTAの役員をしている者もいますよ。そういった者達が何かの切っ掛けで知り合った女性に声をかけたりするんです。当然風俗や水商売の経験者は誘いません・・・あくまで普通の奥様だけです」


「・・・なるほど、でも 舞台に上がる女性はやっぱり金銭的な理由が大きいのですか」


「そうですね、確かに借金からこの世界に入る方が多いですね。我々はかなりの高給を女性に支払っています。ただし女性の中でも稼げる者と稼げない者の差は結構つきますけどね。それと切っ掛けは借金でも、それを返し終わったからといってすぐに辞める女性は少ないのですよ」


「えっ それは何故ですか?」


「ふふ これがまた女性の不思議なところで、女は身近な同性に知らず知らずのうちにライバル心を持っていますよね。だからこういう世界の中でも人気を気にするし、いくら位稼いでいるのか互いを意識しています。先ほどの夕月(ゆうづき)と夕華(ゆうか)もそうです。そういったライバル心があの舞台に立たせ続けるのかも知れませんね。まあ 我々からしたらうれしい限りですけど。それともう一つ あの舞台に立ち続ける理由があるんですけどね・・・」


 (・・・もう一つの理由?)
 中村は一瞬神崎の目の奥に光るものを感じとっていた。


「しかし普通の奥様がよくあのような事ができますね」


「いえいえ、例えば今日の夕月や夕華のあの舞台を最初からできる女性はいませんよ。あれはかなりハードですよね。皆さん最初は軽いところから始めます、夕月も夕華もそうでした。あとは我々スタッフがうまく育てていくのです」


「育てる・・・? 何かコツみたいなものがあるのですか」


「ふふ 中村さん、根本的に女性の奥底には黒いDNAがあるのですよ。色んな体験をしたい、不道徳な行為を楽しみたい、そしてそれを見られたい見せつけたい、特に今まで真面目に生きてきた奥様にはね・・・。我々は上手く奥様の心の扉を開けてあげるだけですよ・・・ところで中村さんの奥様はどうですか?奥様も同じような欲望を心の奥底に持っているかもしれませんよ、切っ掛けさえあれば・・・」


「えっ? まさか うちの妻に限って・・・」


「ふふふ わかりませんよ。・・・それでコツとしては 絶対に女性に強制をしない事ですね。我々はうまく暗示を掛け誘導はしますが最後の選択は女性に必ずさせます。女性自身に決めさせるのです。根本的に真面目な女性は自分で決めた事はがんばります、そしてそういう人は長続きしてますね」


 「なるほど・・・そんなものですか」
脳裏に一瞬妻の顔が浮かび 中村は知らず知らずのうちに神崎の話にのめり込んでいった。










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